弁護士の方は,既存の法律事務所や企業で数年間働いた後に独立し,自分で事務所を構えられる方も多い印象です。
また,いわゆる即独の弁護士として,司法修習を終えられた後すぐに事務所を構えられる方も少なくありません。
独立される弁護士の方の中には,可能な限り初期費用を減らすことによって独立失敗のリスクを抑えたいとお考えの方もいるのではないでしょうか。
本記事では,そのような弁護士の方に向け,「レンタルオフィスを借りるという選択肢の可能性や注意点」の方をお伝えしたいと思います。
なお,大阪でレンタルオフィスを探されている方は,こちらの記事もご参照ください。
弁護士がレンタルオフィスを借りることの是非
そもそも弁護士の方がレンタルオフィスに事務所を構えるというのは許されるのでしょうか。
弁護士という職業は,依頼者のプライベートな事項を多く取り扱う職業になるため,依頼者の秘密の徹底した管理が必要になります。
弁護士法第23条においても,弁護士の守秘義務が法定されています。また,弁護士職務基本規程の第23条においても同様に,守秘義務の遵守が求められています。
したがって,レンタルオフィスで弁護士業を営むためには,次の点に注意する必要があると考えられます。
- 執務室や打ち合わせ室での電話や会話が,他の利用者には聞こえない。
- 郵便の取り違いが生じないような仕組みになっている。
- 事件記録が第三者に閲覧される恐れがない。
実際に,神奈川県弁護士会は「法律事務所の届け出について」と題する文書において,法律事務所を構える場所が上記3点を充足する必要があることを示唆しています。
なお,レンタルオフィスの他にバーチャルオフィスという選択肢も考えられますが,こちらについては,東京弁護士会が公表している「独立開業マニュアル東弁版」に,次のような記載があるので,基本的には利用できないと考えて良いでしょう。
事務所の実態を伴わない形態いわゆる「バーチャルオフィス」については,弁護士法第20条の事務所設置義務に抵触するため認められないとの考えが大勢である。
弁護士の方は,バーチャルオフィスという選択肢ではなく,法律事務所としての実態を備えることが可能なレンタルオフィスという選択肢を選ぶべきと評価できます。
レンタルオフィスを選ぶポイント
上記のような弁護士業の特殊性を前提に考えると,弁護士の方がレンタルオフィスを選ぶ場合には,次の特徴を有するレンタルオフィスを選ぶのが良いのではないでしょうか。
- 執務室が完全個室であること
- 会議室が完全個室であること
- 専用の郵便受けがあり,ロック式であること
レンタルオフィスには,さまざまな「個室」のタイプがありますが,欄間が空いている「個室」が少なくありません。
このような「個室」だと,欄間から執務室内の会話や電話の音が漏れてしまいかねません。
実際に,本記事の執筆者がレンタルオフィスで独立された弁護士の方にインタビューを行った際にも,いくつかのレンタルオフィスを内覧する中で,欄間オープンの「個室」を良く目にしたと回答されていました。
弁護士の方がレンタルオフィスを選ぶ際には欄間クローズの完全個室型のオフィスを選ぶ方が良いでしょう。
オフィスにこだわりのある弁護士の方は,次のようなオプションサービスが付いているレンタルオフィスを借りるのも良いかもしれません。
- コンシェルジュサービス
- 電話代行サービス
特にコンシェルジュサービスがあると,初めて法律事務所を利用する依頼者の方に安心してもらうこともできるかもしれません。
また,電話代行サービスは,レンタルオフィスとセットで契約する必要性は必ずしもないものの,セットで契約することによって月額費用を抑えられる可能性があります。
弁護士の方が利用できるレンタルオフィス
弁護士業にも適しているレンタルオフィスとしては,たとえば,次のような事業者の提供する場所が挙げられます。
※ ここでは本記事の執筆に際して弁護士の方にインタビューを行い,実際に弁護士の方が利用されていることが確認できたレンタルオフィスなどを記載しています。
特にTLC本郷は,東京での開業を考えられている弁護士の方にはオススメです。
また,世界120カ国で3400拠点を運営しているリージャス(Regus) は,敷金礼金が0円であり,2万円台で使用できるオフィスも用意されているようです。
ビズサークル は,地方にも多くの拠点を有していることから,地方での開業を考えられている方は,こちらの利用を一度検討してみるのが良いかもしれません。
まとめ
本記事では,弁護士の方が開業時にレンタルオフィスを利用するという選択肢について,その可能性や注意点を整理しました。
上記の「独立開業マニュアル東弁版」にも次の記載がある通り,弁護士の方が開業するにあたってレンタルオフィスの利用が禁止されているわけではありません。
本記事の内容のご参照の上,まずはレンタルオフィスで初期費用を抑えて開業するという選択肢も検討してみてはいかがでしょうか。