弁護士の案件管理システムとは
1つの案件の解決に没頭するドラマや映画の中の弁護士と異なり,現実の弁護士は,日々多くの案件を取り扱う必要があります。
少し古いデータにはなりますが,日本弁護士連合会が2008年に実施したアンケートでは,一度に40件以上の案件を抱えている弁護士が約40%を占めていました(参照:弁護士実勢(弁護士センサス)調査)。
調停を含む裁判所事件に限定しても,一度に20件以上の案件を抱えている弁護士が約40%を占めていました。
このように多くの案件を抱える弁護士にとっては,取り扱っている案件の進捗状況や期日,スケージュールを適切に管理するシステムが不可欠です。
案件管理システムとコンフリクトチェック
弁護士が案件管理システムを必要とする理由としては,弁護士法25条も挙げられます。
第二十五条 弁護士は,次に掲げる事件については,その職務を行つてはならない。ただし,第三号及び第九号に掲げる事件については,受任している事件の依頼者が同意した場合は,この限りでない。
弁護士法25条
一 相手方の協議を受けて賛助し,又はその依頼を承諾した事件
二 相手方の協議を受けた事件で,その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの
三 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
(省略)
弁護士は,すでに一方当事者から依頼を受けている事件について,他方当事者からの依頼を受けることはできません。
したがって,任意の事件に関して依頼を受けようとする場合には,事前に相手方当事者からの相談等を受けていないかを確認する必要があります。
この確認を一般的に「コンフリクトチェック」と呼びますが,このコンフリクトチェックのためにも,弁護士には案件管理システムが必要となります。
案件管理システムを選ぶ際のポイント
上記のとおり,現在では弁護士にも案件管理システムが不可欠といえます。
では,法律事務所に案件管理システムを導入するにあたり,弁護士の方は,どのようなポイントに注意して案件管理システムを選ぶべきでしょうか。
当サイトでは,案件管理システムを使用されている弁護士の方にインタビューを行い,案件管理システムを導入するにあたっては,次のポイントを確認すべきと考えています。
- ・必要な機能が網羅されているか。
- ・月額料金が過度な負担にならないか。
- ・十分なセキュリティが備わっているか。
特にセキュリティに関しては,2022年6月10日の日弁連定時総会において,「弁護士情報セキュリティ規程」が成立しており,2024年6月1日から施行されています。
このように弁護士にも十分なセキュリティ対策が求められるようになってきている中で,案件管理システムに登録した情報が案件管理システムの脆弱性に起因する形で漏洩してしまうと,その案件管理システムを選んだ弁護士の責任も追及されかねません。
これから案件管理システムを導入しようとする弁護士の方は,セキュリティ対策の観点からも,「なぜ,その案件管理システムを選択したのか。」を十分に説明できるようにした上で,案件管理システムを選ばないといけないでしょう。
弁護士にオススメの案件管理システムの比較
それでは,以上を踏まえ,弁護士にオススメの案件管理システムを5つ紹介します。
案件管理システム①|LEALA
世界No.1の案件管理システム“Salesforce”を基盤に採用することで,優れたシステムの拡張性と耐久性,堅牢なセキュリティのもと法律事務所の業務遂行を可能とします。
LEALAの弁護士による利用状況
クラウドファイル管理システム「Box」や「Gmail」「Googleカレンダー」などとも連携をしていますが,LEALAを中心に情報を集約できるので効率的に業務を行うことができています。極論,ノートパソコンさえあれば,顧客や案件情報の確認/把握はもちろん,ファイル管理や書類データ送付,電話に至るまで全て行うことができます。
様々なクラウドツールを一元化して,なくてはならない事務所の基幹システムに
従前の自社開発システムで合算請求書を作成する際には,一枚あたり20~30分程時間を消費していましたが,LEALA導入後は5分に短縮。また,年間数十万円単位以上発生していた請求漏れを未然に防ぎ,体感ですが請求書作成における業務負荷を約5倍軽減できました。タイムチャージおよび請求運用基盤の強化により,請求漏れ防止と売上の向上を実現しました。
請求書の作成時間を1/5に効率化
LEALAの主要機能
- ◯顧客/案件管理
- ・コンフリチェック
- ・案件進捗管理
- ・事件別案件管理
- ・ファイル管理/定型書類自動作成
- ◯会計管理(インボイス・英文/外貨対応)
- ・タイムチャージ管理
- ・請求/実費/入出金管理
- ・請求書等,定型書類自動作成/出力
- ◯分析
- ・所員別工数可視化
- ・売上管理
- ・マーケティング効果測定
- ◯業務補助
- ・所内外コミュニケーションツール
- ・タスク管理/入電管理
- ・スケジュール管理
- ・各種業務アプリとの連携
案件管理システム②|Armana(アルマナ)
2つ目がArmana(アルマナ)です。
弁護士ドットコムを開発者として立ち上げた代表が設立した会社,株式会社カイラステクノロジーが手がけるサービスです。
Armana(アルマナ)は業界最安水準の「1000円プラン」を提供し,手軽に始められますが,その他にも多彩なプラン・オプションを提供する多機能さが特徴です。
Armana(アルマナ)の弁護士による利用状況
Armana(アルマナ)の公式サイトによれば,次の法律事務所が同システムを導入しているようです。
- 法律事務所ASCOPE
- 弁護士法人ネクスパート法律事務所
- ベリーベスト法律事務所
- 杜若経営法律事務所
- 弁護士法人ベンチャーサポート
- なかま法律事務所
多くの弁護士が所属する法律事務所も利用していることから,信頼できるサービスと評価できるでしょう。
Armana(アルマナ)の主要機能
Armana(アルマナ)には,次のような機能が用意されています。
- 案件管理
- 顧問管理
- 訴訟管理
- 名簿管理
- 入出金管理
- 予定管理
- 外部サービス連携機能
- Googleドライブ,OneDrive/Sharepoint,box,Dropbox
- Outlookカレンダー,Googleカレンダー,Todoist
- Chatwork,Slack,Microsoft Teams
- freee,MoneyForwardクラウド
- Webhoo連携,その他
- eメール及び,SMSメール送信機能
案件管理システム③|loioz(ロイオズ)
3つ目は,loioz(ロイオズ)です。
株式会社ロイオズが開発して提供しているサービスです。
loioz(ロイオズ)の弁護士による利用状況
実際にも多くの弁護士や法律事務所によって利用されているサービスです。
事務員には入所したらまずloiozの操作を覚えてもらうのですが,loiozは非常にシンプルで簡単に使いこなせるため,みんなスムーズに業務に取り組めています。弁護士事務所としては依頼者の方に喜んでいただけることが一番の目標ですが,所内の効率化を追及して事務員が働きやすい事務所にすることも大切だと思っています。そのためにも,loiozの導入は正解でした。
情報共有の効率化により生産性が向上,案件数が 4 倍に
導入して間もないため,まだ使いこなせていないのが実情ですが,事件処理の進捗が一元化できて,非常に便利です。今動いている事件が何件あるか把握しやすいですし,経費処理,請求書の発行がスムーズになったので満足しています。 特に,入出金明細は入力したものが,エクセル上で「入出金明細」と「請求書」のシートに分かれて1つのファイルにまとまるので,非常に扱いやすいです。事件情報が漏れなく一元管理でき,経費処理もスムーズに
loioz(ロイオズ)の主要機能
loioz(ロイオズ)には,次のような機能が用意されています。
- スケジュール管理
- 案件・名簿一覧
- 名簿管理
- 案件・裁判管理
- 会計管理
- 業務管理
- 帳簿出力
- メッセージ
- タスク管理
- ファイル管理
特に会計管理については,2023年10月1日から開始されたインボイス制度に対応した適格請求書も発行できます。
2025年に入ってからもこまめにアップデートされていますので,今後も継続的により良いシステムにアップデートされていくものと予想できます。
案件管理システム④|弁護士ドットコム案件管理システム
4つ目は,弁護士ドットコムの案件管理システムです。
設立後一貫して弁護士向けにサービス開発・提供を継続している弁護士ドットコムが提供するサービスです。 「200名超の弁護士先生とのインタビューから見えた課題」に基づいて開発されたサービスとのことです。
弁護士ドットコムの案件管理システムに関する弁護士による利用状況
弁護士ドットコムが提供しているサービスなこともあり,この案件管理システムも多くの弁護士や法律事務所によって利用されています。
「弁護士ドットコム案件管理システム」は,案件やタスク別に進捗状況を確認することができるので,「漏れなく計画的に」仕事を進めることができると感じて導入を決めました。
「依頼者に言われる前にやる」顧客対応に大きな変化,“ワンオペ”体制をシステムがサポート
実際に,とてもシンプルな作りになっており,ある程度の枠組みはあるものの,自由度が高く,自分でカスタマイズして入力できるので使いやすく,これなら長続きするのではと考えています。
『案件管理システム』には案件の対応履歴が残るので,依頼者に「いつ,どう対応したか」という情報を正確に報告できるようになりました。このことは依頼者対応において良い変化になったと思います。
情報をシステムに一元化することで,紙管理よりも「グッと手間が減りました」
弁護士ドットコムの案件管理システムの主要機能
弁護士ドットコムの案件管理システムには,次のような機能が用意されています。
- 弁護士業務テンプレート機能
- 進行状況の可視化機能
- 予定一覧メール送信機能
- 連絡先情報集約機能
毎週月曜日に予定一覧メールが配信される機能がある点が特徴です。
案件管理システム⑤|firmee
5つ目は,firmee(ファーミー)です。
firmee(ファーミー)は,現役の弁護士が開発した,法律事務所に特化したクラウド型事件管理システムです。
弁護士によるfirmeeの利用状況
firmeeは,現役の弁護士が開発したサービスであり,多くの法律事務所で利用されています。
firmeeは案件ごとに様々な情報を管理できますが,それぞれの期日メモやタスクを案件ごとに作成して案件ファイルに紐付けられるので,外出中でも案件管理や秘書と簡単にコミュニケーションが取れるという点も個人的に気に入っています。また,自由度の高い設計思想なので,ある程度事務所の運用に即した活用ができる点も助かっています。
導入弁護士インタビュー / 早稲田リーガルコモンズ法律事務所
firmeeは,知人の弁護士にも推薦したいサービスですね。メリットとしては,事務所内のみなどと,場所を限定せず利用できる,クラウドサービスであることが最も便利な点だと思います。 それに加えて,UIも使いやすく,弁護士案件管理ツールとして必要な機能が揃っていること,導入コストが安いことが,firmeeを利用する大きなメリットではないでしょうか。
導入事務所インタビュー / 古瀬法律事務所様
firmeeの主要機能
- ・情報や作業ログの一元管理
- ・簡単コンフリチェック
- ・手持ちデータの一括インポート
- ・充実した外部サービス連携
- ・入力情報の雛形反映
- ・インボイス・電帳法対応
- ・後見・保佐・補助パック
- ・クレジットカード決済の連携
弁護士向けの案件管理システムであるfirmeeには,登録不要のデモや,無料プランが用意されています。
登録不要のデモは,登録手続が一切不要で案件管理システムを試すことができますので,クラウド型の案件管理システムを試してみたい弁護士の方は,一度サイトにアクセスしてみてはいかがでしょうか。
最後に
本記事では,弁護士の業務に必要不可欠な案件管理システムについて,5つのシステムをご紹介しました。
まだ案件管理システムを導入されていない弁護士の方や,これから独立して案件管理システムを導入しようとお考えの方の参考になれば幸いです。