※ この記事は,当メディアが,別のサイトから譲渡を受けて掲載しているものとなります。最新でない情報が含まれている可能性がある点,ご理解いただけますと幸いです。
独学による司法試験合格の可能性
司法試験の難易度
独学で司法試験に合格することは可能でしょうか?
司法試験は,一般的には難易度の高い試験と考えられています。「独学では厳しい」「ダブルスクールが必要」という人も多いです。
けれども,現在の司法試験で求められる能力は,実はそれほど高いものではありません。
たとえば,平成30年度の公認会計士試験の合格率は,約11% (参考: 金融庁のHP)なのに対し,同年の司法試験の合格率は,約30%です(参考: 法務省のHP)。ちなみに,平成29年度の行政書士試験の合格率は約16%です。
この数値だけをみても,現在の司法試験で求められる能力の水準が,それほど高いものではないことが分かるでしょう。
「公認会計士試験と違って現行の司法試験はロースクール等を出なければそもそも受験する ことができないのだから,合格率だけで難易を考えるのはおかしい」との批判を受けそうですが, その批判が前提とする「受験資格を得るのが難しい」というのは本当でしょうか? ロースクール入試の合格率は約50%となっています (参考: 文部科学省のHP)。また,ロースクール入試では,複数のロースクールを受験することができます。
「司法試験を受けよう」とする意思をもった人が司法試験に合格する可能性は,(他の試験と比較しても)かなり高いといえるでしょう。 その意味で,司法試験で求められる「能力」はそれほど高いものではないといえます。
司法試験対策を独学で行なう上での注意点
上記のとおり,司法試験を合格するために必要な能力は,それほど高いものではありません。
しかし,これは「司法試験は余裕で独学で突破可能である!」ということを必ずしも意味しません。
少し話がそれるかもしれませんが,ある資格試験に合格しようとするとき,『その効率的な勉強方法』を行う上で,何が重要になるでしょうか?
人によって答えは変わるかもしれませんが,私は
「アウトプットをしてPDCAサイクルを回す機会をどれだけ確保できるか」
が最も重要であると思います。アウトプットをせず,PDCAサイクルを回すということをしなければ,知識を正確に理解することができず, また,知識を十分に定着させることもできません。
実際に,このような「アウトプットの重要性」については,すでに『サイエンス』誌の2008年2月15日号でも論文として報告されています。 パデュー大学のカーピック博士が,「インプットよりもアウトプットの方が, より知識の定着に寄与する」ということを研究成果として示しました (参考 『The critical importance of retrieval for leaning.』))。
まさに,この「アウトプットとPDCAサイクル」との関係で,司法試験の問題形式が,独学にとっての障壁になってしまうのです。
論文式試験に合格するためには,より多くの論文を書き,それを添削してもらうことが何よりも有意義・効果的です。少なくとも,自分の理解を短い文章の形にまとめ,それをチェックしてもらう機会の存在が不可欠です。
しかし,独学では,このような機会を得るのが困難なのです。
独学で司法試験合格を目指す上では,このビハインドを理解しておくのが重要でしょう。 このビハインドを理解し,それを補う工夫をすることが大切になります。
繰り返しになりますが,上記のように,司法試験合格のために求められる能力はそれほど高いものではありません。
そのため,このビハインドを補うための工夫をすれば,独学で司法試験に合格することができるものと思われます。
短答式試験の独学での勉強法と参考書
短答式試験は独学でも余裕?
短答式試験には,論文式試験のような障壁がありません。いくらでも正確な答えの載っている市販の参考書があり, それを使って何回でもアウトプットをしてPDCAサイクルを回すことができます。
したがって,短答式試験については,独学でも余裕で合格点に達することができ, かつ,高得点を取ることができるものと思われます。
短答式試験の勉強法
具体的には,上記で引用したカーピック博士の実験で高得点を取った生徒達の学習方法を採用するのが良いでしょう。
何度も過去問を繰り返し解くことで,自動的に高得点が取れるようになっているでしょう。
たまに短答式試験のために何度も基本書を読もうとする人を見かけますが, 合理的な方法とはいえないでしょう。インプットよりもアウトプットの方が知識の定着に役立つことは すでに多くの研究が明らかにしています(参考: 『The influence of retrieval on retention.』や 『Test-enhanced learning: taking memory tests improves long-term retention.』)。
短答式試験の参考書
参考書としては,より素早くPDCAを回すことのできる辰巳法律研究所の肢別本をオススメします。
これさえやり込めば,8割以上の高得点を容易に狙えるものと思われます。 アウトプットの機会を多く取るようにして,何度もこのシリーズを解いて見てください。
論文式試験の独学での勉強法と参考書
論文式試験の勉強法
短答式と異なり,論文式試験は,上記のように独学者に対する障壁が厚く, 何とかして『アウトプットをしてPDCAサイクルを回す』ための工夫を凝らす必要があります。
最もシンプルな方法は,模範解答(少なくとも十分な解説)が付いている市販の問題集を何度もやり込むことです。
この方法が適切に実行できれば,自然と論文式試験でも合格点を取ることができるようになるでしょう。基本書を読み込むという作業は,インプット作業に他ならず,上記のところから,あまり効果的な方法とはいえません。良い問題集を何度も解いてPDCAサイクルを回す機会を確保できれば,それが一番効果的です。
しかしながら,実は,この方法を実際に実行するのは困難です。 残念ながら,論文式試験に関する『問題集』は最近増えてきているものの,『良い問題集』がなかなか存在しないからです。 問題は良いものの,解説部分がその問題に適切に答えていない本(驚くことに,有名な学者の方が書いている本であっても, このような本は多いです)や,解説部分が間違ってしまっている本,そもそも問題が良くない本などが大量に存在する一方で, 良い問題と良い解説がセットになっている本は,本当に少ないです。
では,どうすれば良いのでしょうか?
オススメは,次のような方法です。
まず,「問題が良い本」を購入します(次の項目で具体的に紹介します)。
次に,解説部分を見つつ,「良い解答」を自分で作成します (残念ながら,解説部分だけを見ても良い解答を作成する上での十分な情報を得られない本がほとんどです。 そのような本に関しては,基本書等と照らし合わせながら,何とか作成します。)。
そして,この「良い問題」と「良い解答」がセットになった本を何度も解き直し,PDCAサイクルを回します。
このように十分な解説が付いていない問題集が多いのは,「模範解答を上から与えるのは良くない」という前述の教授陣の 考え方の帰結だと思います。けれども,この状況は,法学部生・ロースクール生の法律の学習を大きく阻害しているように感じます。そして,予備校に通う費用のない学生から法曹になる機会を奪ってしまっているように感じます。迅速な対応が望まれるところだと思います。
論文式試験の参考書
「問題が良い本」としては,次のものが挙げられます(「解説が良い」とは言い難い本も多くあります。それらに関しては上記のように基本書等で補いながら「良い解答」を作成してみる必要があります。)。
憲法
憲法は,残念ながら,市販の問題集をあげるのは難しいです。司法試験の過去問を解くのが最善の方法であると考えます。出題の趣旨や採点実感を参考にすることで,「良い解答」を作ることができるものと思われます。
民法
民法は,民法総合・事例演習が最高の一冊です。これを何度もやり込めば,司法試験の論文式試験が簡単に思えるでしょう。一応,参照すべき文献を示してくれているので,それも参照にしながら,「良い解答」を作るのが良いと思います。
刑法
刑法も,刑法事例演習教材が最高の一冊です。これさえ何度もやれば,司法試験も十分に突破できると思います。
民事訴訟法
民事訴訟法は,憲法と同じく,市販の問題集をあげるのは難しいです。司法試験の過去問を解くのが最善の方法でしょう。出題の趣旨や採点実感を参考にしながら,「良い解答」を作ることが良いと思われます。
刑事訴訟法
刑事訴訟法は,事例演習刑事訴訟法がオススメです。この本と司法試験の過去問を何度も解けば, 十分に合格水準に達することができると思います。
行政法
行政法は,基礎演習行政法がオススメです。この本と司法試験の過去問を何度も解くことにより, 合格水準に達することができると思います。土田教授の記述は非常に分かりやすいため,実践演習行政法も, かなり良い本なのだと思います。ただ,まだ読めていないため,ここでは記載を控えます。
会社法
会社法は,民法や刑法と同じく,会社法事例演習教材が最高の一冊です。司法試験の合格水準に入るためには,これだけやれば十分でしょう。
※ この記事は,当メディアが,別のサイトから譲渡を受けて掲載しているものとなります。最新でない情報が含まれている可能性がある点,ご理解いただけますと幸いです。