「弁護士の集客はホームページか?ポータルサイトか?」でも紹介させていただいたように,弁護士の数は年々上昇しています。
2019年時点で,2011年時点での30,485人から約35%増加しており,41,118人となっています(日本弁護士連合会「弁護士白書」)。
このような中で,WEB経由での集客を考えられている弁護士の方も少なくありません。
そして,「ホームページがない弁護士|ホームページを持たないと淘汰されるか?」でも記載しましたが,WEB経由での集客も考えた弁護士の方にとっては,ホームページの作成が不可欠です。
しかし,ホームページ制作会社に作成を依頼すると,少なくない費用がかかってしまいます。また,必ずしも自分の希望通りのホームページが完成するとも限りません。
そこで,特に時間にある程度の余裕がある方にとっては,ホームページを自作することが一つの選択肢になるでしょう。
この記事では,自分でホームページを作成することを検討されている弁護士の方に向けて,弁護士のホームページに特有の広告規制について,その概要を記載した上で,ホームページを作成する方法やホームページ作成の手順を解説したいと思います。
弁護士のホームページと広告規制
はじめに,そもそも弁護士の方が自身のホームページを自由に作成することができるのか,弁護士の方のホームページと広告規制について,検討します。
2000年の緩和まで
かつて弁護士は,広告を行うことができず,広告目的でのホームページを持つこともできませんでした。
柴田仁夫氏の「弁護士広告の広告コミュニケーション効果に関する一考察」(以下「本論文」)にも記載がある通り,次の伝統的な価値観から,弁護士がホームページなどを制作して広告を行うことはおかしいとされていました。
弁護士という職業はプロフェッションでありビジネスではなく,弁護士の使命は社会正義の実現にあるのであって,教育的,専門的,法的エリートであるプロフェッションとして商業化に身を任せるべきでない。
1987年になってからは,条件付きでの広告を認める広告許容基準が新設されたものの,依然として厳しい規制がありました。
2000年の緩和以後
しかし,この状況は2000年代に変わりました。
2000年には,弁護士の方がホームページを制作して広告を行うことができるようになりました。
実際に,2004年の弁護士報酬の自由化,2006年の過払金の返還に関する最高裁判所の判決(平成16(受)1518)を経て弁護士のホームページ等による広告は盛んになっています。
しかしながら,依然として弁護士のホームページ等による広告については,広告規制が存在しています。
弁護士の方が,ホームページを作成する上では,この広告規制を十分に理解しておく必要があると考えられます。
弁護士等の業務広告に関する規程や,それに基づく業務広告に関する指針に,広告規制の具体的な規制が記載されていますが,こちらの具体的な内容については,次の記事もご参照ください。
自分でホームページを作成する方法3選
それでは続いて,上記「弁護士のホームページと広告規制」で検討した広告規制の内容を踏まえ,弁護士の方が自分でホームページを作成する方法をいくつかご紹介したいと思います。
ペライチの利用
1つ目は,日本企業である株式会社ペライチが運営する「ペライチ」の利用です。
ペライチは,専門知識不要で,わずか3ステップでホームページを公開できるサービスです。
次の3ステップで自分だけのホームページを公開できます。
- デザイン(テンプレート)を選ぶ
- 内容を作る
- 公開する
テンプレートから選ぶ必要があるという制約があるものの,士業用のテンプレートも数多く用意されているため,大きな制約にはなりません。
弁護士のホームページとして利用するためには,有料プランのうち,①レギュラープランか,②ビジネスプランを選ぶと良いでしょう。
ビジネスプランであれば,メルマガ配信もできるほか,web予約機能も基本料金内で利用することが可能です。
2022年中も,毎月一定の頻度で新機能の開発や機能のアップグレードが行われているようですので,2023年も,継続的に,より使いやすいサービスになっていくことでしょう。
ペライチの利用をご希望の方は,次のリンクからサービスページにアクセス可能です。
Wixの利用
2つ目は,Wix.com Ltd.が運営する「Wix」の利用です。
こちらも上記の「ペライチ」と同じく,テンプレートを選んだ上で,Wix指定の方法にしたがって入力等を進めていくだけで簡単にホームページが作成できるサービスになります。
イスラエル発のサービスであり,世界中にユーザーがいることから,信頼性の高いサービスといえるでしょう。
他方で,日本に特化しているサービスではないため,ややサポートに難がある側面は否定できません。
また,少し機能が多すぎるきらいがあり,その分操作が難しいようにも感じられます。
日本語でのサポートが充実しているサービスの方が良いと感じる方や,必要最低限の機能を使いこなす方が向いていると感じる方は,「Wix」よりも「ペライチ」を選ぶ方が良いでしょう。
WordPressの利用
3つ目は,言わずと知れた「WordPress」の利用です。
W3Techsという会社の調査結果によると,日本のWebサイトでいえば,約83%のシェアがあるようです。
実際に,東京藝術大学などの学校でも利用されているほか,渋谷109などの商業施設でも利用されています。
試しに調査したところ,四大法律事務所の一角をなす長島・大野・常松法律事務所のホームページも,WordPressを使用しているようでした。
セキュリティの観点からは,WordPressを選択すれば問題ないと言えるでしょう。
※ WordPress利用の方法によってはセキュリティ上の問題が生じてしまう可能性も否定はできない点には注意が必要です。
WordPressを利用してホームページを自作するメリットとしては,次のような点が挙げられます。
- 自由なデザイン
- 豊富なプラグインの利用可能性
他方で,上記の「ペライチ」や「Wix」と比較すると,次のようなデメリットがあります。
- 作成に必要となる知識が多い
- プログラミングも必要になる
総じて言えば,時間がないけれどもホームページを自作してみたい人は「ペライチ」や「Wix」を選択するのが良く,こだわりが強く,時間をかけてでも自分の希望に合ったホームページを作成したい方は「WordPress」を利用すると良いといえます。
作成方法の比較
上記で記載した3つのホームページ作成方法について,それぞれの特徴を簡単に表にまとめると,次のとおりです。
ペライチ | Wix | WordPress | |
---|---|---|---|
手軽さ | ◎ | △ | × |
デザインの自由度 | × | △ | ◎ |
サポートの充実 | ◎ | △ | × |
WordPressによるホームページ制作の流れ
弁護士の方がホームページを自分で作成する方法としては,上記「自分でホームページを作成する方法3選」で述べた3つの方法がありますが,ここからは特に「WordPress」を利用した方法について,その概要を記載します。
ペライチやWixを利用したい方は,公式サイトの説明が充実していることから,そちらを参照されるのが良いと思います。
自分でホームページを作成するための手順の概要は次の通りです。
- レンタルサーバーを借りる。
- 独自ドメインを取得する。
- 独自ドメインを設定する。
- レンタルサーバーにWordPressをインストールする。
- SSL設定を行う。
- テーマをインストールする。
- カスタマイズする。
なお,「SSL設定」については総務省が公開している「国民のための情報セキュリティサイト」の次の記載をご参照ください。
SSLは,WebサーバとWebブラウザとの通信においてやりとりされるデータの暗号化を実現する技術です。たとえば,インターネットバンキングで利用者登録する場合などは,このSSLを使ったホームページが使われます。ここで入力された情報は暗号化され,金融機関のWebサーバに送られるのです。これにより,通信の途中で情報が盗み見られることを防いでいます。
総務省「国民のための情報セキュリティサイト」
端的に言えば,SSL設定が済んでいないホームページについては,ホームページ上のフォームから送信した情報が漏洩するリスクがあります。
相談者から個人情報等が送信される可能性のある弁護士のホームページにおいては,SSL設定は不可欠です。
SSLが使用されていないことはGoogleなどの検索エンジンにも把握されるため,SSLに対応していないと,検索結果に上位表示されることも難しくなる点に注意が必要です。
エックスサーバーのクイックスタートの利用
それでは,ホームページの自作を考えられた弁護士の方が,国内シェアNo.1のレンタルサーバーであるエックスサーバー の「クイックスタート」を利用する前提で,上記手順の詳細を記載します。
エックスサーバーのクイックスタートを利用すれば,初めてホームページを作成する弁護士の方でも,1時間もあればホームページを立ち上げることが可能ですので,おすすめです。
なお,エックスサーバー以外で独自ドメインを取得済みのような場合には,別途設定が必要になる点,ご注意ください。
※ 以下の説明については,【初心者でも安心】たった10分で出来るWordPressブログの始め方 を参考にしています。
STEP①
まずは,エックスサーバーの申込みフォームにアクセスし,「10日間無料お試し 新規お申込み」を選択します。
STEP②
次に,プランを選択します。スタンダードプランを選ぶことで問題ないでしょう。
なお,サーバーIDは特段のこだわりがなければ,変更の必要はありません。
WordPressクイックスタートの「利用する」にチェックを入れるのを忘れないようにしましょう。
STEP③
下記掲載の画面に移行したら,ドメインを入力しましょう。
弁護士のホームページを確認すると,「〇〇-law.com」などとしている例が多いように思います。
STEP④
そして,ブログ名やユーザー名などを入力します。ブログ名は後で変更可能なため,適当に付けることで問題ありませんが,ユーザー名とパスワードは後で利用することになるため,どこかにメモしておく方が良いでしょう。
STEP⑤
下記画面に移行したら,「テーマ」を選択した上で,「子テーマをインストールする」にチェックを入れ,「Xserverアカウントの登録へ進む」をクリックします。
「テーマ」は,弁護士がホームページを作成する上では「Lightning」がオススメです。
STEP⑥
下記画面に移行したら,あとは指示に従って必要情報を入力していけば,自動的にWordPressを利用したホームページが立ち上がります。
ホームページのカスタマイズ
上記のエックスサーバーのクイックスタートを利用すれば,独自ドメインの設定やSSL設定などが自動で終了します。
したがって,クイックスタートさえ終わらせれば,あとは細かい調整等を行うことで,自分のオリジナルのホームページを作成することができます。
WordPressを利用して作成したホームページのカスタマイズ方法は,大きく分けると次の2つになります。
- プログラミング不要のカスタマイズ
- プログラミングによるカスタマイズ
テーマとして「Lightning」を利用すれば,そもそも「Lightning」が用意しているカスタマイズ機能が豊富であることに加え,「Lightning」を利用しているユーザーが多いことから,カスタマイズ方法に関する情報が充実しているため,かなり自由にホームページをカスタマイズできます。
カスタマイズ方法の詳細を記載しようとすると,かなり長くなってしまうことから,ここでは,参考になる情報を掲載しているページをご紹介したいと思います。
「Lightning」のカスタマイズ方法としては,エックスサーバーによる連載「WordPressとLightningでホームページを自作する方法!」が非常に参考になります。
この連載は,「連載その1」から「連載その10」まで続き,こちらのページのようなホームページを完成させるまでの過程を事細かに解説してくれています。そのため,この連載を読み込むことで,一人で,かなりスタイリッシュなホームページを自作することができるでしょう。
たとえば,弁護士が集客用に作成するホームページには問い合わせ用の窓口が必須になりますが,この連載の「連載その8」では,スパム対策も含めて詳細に解説してくれています。
最後に
この記事では,自分でホームページを作成することを検討されている弁護士の方に向けて,ホームページ作成の手順等を記載しました。
「自分でホームページを作成する方法3選」では,弁護士の方が自分でホームページを作成するために選択できる3つの方法をご紹介しました。
サクッとホームページを作成したい弁護士の方には,日本企業である株式会社ペライチが運営する「ペライチ」がおすすめです。わずか3ステップでホームページを公開できるという特徴を有しています。
他方で,時間をかけてでも細部までこだわった自分だけのデザインでホームページを作成したい弁護士の方や,ホームページの仕組みを学習したい弁護士の方には,WordPressの利用がおすすめです。
現在では,エックスサーバー が提供しているクイックスタートを利用することで1時間もかけずにWordPressでホームページを立ち上げることができるため,興味のある方は,一度試してみては,いかがでしょうか。