弁護士の服装はスーツでなければならないのでしょうか。結論,そのようなルールはありませんが,「関係者からどのように見えるか」は常に意識すべきでしょう。
この記事では,これから弁護士になる方や,服装に悩む弁護士のために,弁護士の服装についてまとめています。
1. 弁護士の服装はスーツじゃなければいけないのか?
結論として,スーツを着なければならないという決まりはありません。
ただし,裁判所に行く際にはスーツを着用するのが一般的です。実際に裁判所に行ってみても,弁護士の多くはスーツを着用していることがわかります。
また,相談者や既存のクライアントと打ち合わせをする際にも,マナーとしてスーツを着用するのが無難です。
服装についてどのような感想を抱くかは人それぞれであり,中には「弁護士なのにスーツじゃないのか。」などと感じる方もいるからです。
弁護士がスーツを着ていないことに不快感や不安を抱く方は一定数いても,スーツを着ていることに不快感や不安を抱く方はほとんどいないと考えられますので,スーツが”無難”ということになるのです。
一方で,裁判所への外出や顧客対応がない日は,好きな服装で仕事をする方も少なくありません。もちろん,法律事務所内部のルールとして,「あまりにカジュアルな服装はダメ」ということはあるかもしれませんが,わざわざルールを設けている事務所の方が少ないと思われます。
私服で仕事をする場合であっても,急な顧客対応などに対応できるよう,スーツ一式は事務所に置いておくと良いかと思います。
2. シーン別|弁護士の服装
(1)法廷での服装
訴訟期日など,法廷に行くときはスーツスタイルが無難です。
裁判官は法服を着用していますし,相手方代理人や検察官はスーツを着用していることが多いでしょう。そのような中であえてカジュアルな服装をする意味はあまりないかと思います。
また,依頼者の身内や知人友人などが傍聴している可能性も想定すべきです。
自身の味方である弁護士が一人だけカジュアルな服装をしていたら,依頼者や身内の方々に対して失礼な印象を与えてしまうかもしれません。
(2)弁論準備手続での服装
弁論準備手続など,裁判所には行くけども,法廷には入らないときの服装です。
この場合も,やはりスーツを着ていくのが無難でしょう。依頼者を代理して,裁判官や相手方代理人がいる状況で訴訟上の行為をするわけですから,スーツを着用しておいた方が良いかと思います。
(3)WEBでの訴訟手続き
最近は,訴訟上の手続きもウェブ会議で行われるなど,司法業界でもIT化が進んでいます。例えば,Teamsで行われる弁論準備手続ではどのような服装をすべきでしょうか。
この場合も,依頼者を代理して,裁判官や相手方代理人の目に入る状況で訴訟上の行為をするわけですから,スーツを着ておくのが無難でしょう。
筆者の経験では,WEBでの訴訟手続きでもほとんどの弁護士がスーツを着用していますが,ごくまれに私服に近い服装の弁護士に遭遇します。
(4)調停・審判での服装
調停や審判など法廷で行わない手続きもありますが,訴訟期日と同じようにスーツスタイルで臨むのが無難でしょう。
弁論準備手続と異なり,依頼者本人が同席することも多くありますので,スーツを着用して失礼のないように配慮した方が良いかと思います。
(5)裁判所に何かを取りに行くときの服装
弁護士業務を行なっていると,決定正本を取りに行く,裁判所内にある弁護士用の郵便受けの中身を取りに行くなど,何かを取りに行くために裁判所に行くことがあります。
このような場面では,あまり服装のことは考えなくて良いでしょう。オフィスカジュアルや私服でも問題ありません。
(6)事務所内での法律相談
法律相談は,悩みを抱えた方が初めて弁護士と接する場面ですから,服装は意外と重要な要素です。無難なのは,知的で誠実な印象を与えることができるスーツでしょう。
一方で,あえてスーツを着用しないことで,弁護士を身近な存在に感じてもらったり,緊張感を和らげるということもできます。
自身のブランディングや戦略,客層によっては,あえてスーツを着用せず「セットアップ×Tシャツ」など,オフィスカジュアルスタイルで対応するのも良いでしょう。
(7)クライアントとのWEB会議
少なくとも一度は会っている既存のクライアントと,WEB会議をするような場面です。
こちらもスーツが無難ではありますが,クライアントに合わせてあえてカジュアルダウンしても良いでしょう。
例えば,ある程度信頼関係が築けている顧問先の社長さんなど,身近なパートナーのような存在となっているようなケースでは,オフィスカジュアルで対応しても良いでしょう。
(8)刑事事件での接見時の服装
スーツが無難ではありますが,緊張感を和らげたり,身近な存在に感じてもらいたいという狙いで,あえてカジュアルな服装をする弁護士もいるようです。
特に,20歳以下の被疑者と接見するときなどは,あえて私服やオフィスカジュアルのような服装で臨むのも一つの選択かもしれません。
(9)会務活動の際の服装
弁護士が所属している弁護士会では様々な会務活動が行われています。参加者は基本的に同じ会に所属する弁護士ということになりますので,過度に服装を気にする必要はありません。
ただ,先輩の弁護士などがいるケースも十分にあり得ます。中には,砕けた服装を良しとしない先輩弁護士もいるかもしれません。そのような方からの印象を悪くしたくないのであれば,基本的にはスーツスタイルで臨むのが無難でしょう。
(10)事務所内での打ち合わせでの服装
事務所内のメンバーで打ち合わせをするときの服装です。
事務所内のルールや雰囲気によって大きく異なりますが,基本的にはスーツやオフィスカジュアルで問題ないでしょう。
(11)企業内弁護士(インハウスローヤー)の服装
企業内のルールや雰囲気に合わせるのが良いでしょう。オフィスカジュアルが浸透している企業で,あえてスーツを着用し続ける必要はありません。
ただし,外部の方と接する予定がある日はスーツを着用した方が良いでしょう。
3. スーツの利点を再確認
(1)依頼者から信頼されやすい
やはり,一般的な方々の中では「弁護士=スーツ」というイメージでしょう。
そして,ビシッとスーツを着用している方が,”仕事ができそうに見える”ものです。
人は第一印象の大部分を視覚から得るというのは有名な話ですよね。
カジュアルな服装と比べれば,スーツの方が依頼者からの信頼を得やすいでしょう。
(2)誠実さが感じられる
スーツスタイルはフォーマル度の高い服装,つまり,失礼のない服装でもあります。自分の体型に合ったスーツをしっかりと着こなしていれば,それだけで誠実な印象を与えることができます。
(3)知的に見える
カジュアルな服装よりも,スーツの方が知的に見えるものです。特に,ダークネイビーなど青みのあるカラーは知的な印象を作るのに最適です。
色彩心理学でも,青は知的・落ち着き・信頼感・誠実といった印象を喚起させる色とされており,企業のコーポレートカラーとして使用されることも多いのです。
いうまでもありませんが,弁護士は法律の専門家です。一般的な方々からすれば,「頭が良く,その賢さでトラブルを解決してくれるプロフェッショナル」です。
法律の専門家としての腕が期待されている以上,「知的に見える」ことはとても重要な要素ではないでしょうか。
4. まとめ
まとめると,弁護士の服装は基本的にスーツが無難ですが,シーンに応じてカジュアルな服装をしても問題はない,ということになります。
仕事での服装は,自分の好き嫌いも大事ですが,「自分の服装を見た人がどう感じるか」を意識することが重要です。
そのように考えることで,自ずと服装は定まってきますし,服装を戦略的に利用することもできます。この記事が,皆様の参考になれば幸いです。