弁護士業務において，PCは単なる作業ツールではなく，法律相談・契約書作成・訴訟対応・調査分析など，多岐にわたる業務の生産性を左右する重要なインフラです。特に近年は，リモートワークやオンライン会議，クラウド型の業務管理ツールの普及により，PCに求められる要件は大きく変化しています。
本記事では，2025年時点での技術トレンドを踏まえ，弁護士が安心して長期間使用できるPCを選ぶためのポイントと，用途別のおすすめモデルを整理しました。日々の法律業務の効率化，セキュリティ確保，将来の拡張性を意識したPC選びの参考にしてください。
パソコンを選ぶ際の技術要件
近年，ノートPCの進化は著しく，弁護士が業務に使う上でも注目すべきポイントがいくつかあります。以下では，実務で特に重要になる観点を整理します。
CPUと処理性能
最新世代の Intel Core Ultra や AMD Ryzen シリーズは，省電力性と処理速度が大きく進化しています。条文検索や判例データベースの利用，PDF比較といった複数アプリの同時利用も快適にこなせる性能を備えています。
また，AI処理専用の「NPU（Neural Processing Unit）」を搭載したモデルも登場しており，将来的なAI業務支援を見据えるなら有力な選択肢です。
メモリ容量
メモリは実務快適性を左右します。最低16GBを標準と考えると安心で，大量の証拠資料や複数ウィンドウを開く場面が多い訴訟実務では32GBも有効です。
ストレージ
SSD搭載は今や必須です。容量は最低512GB，できれば1TBを確保したいところです。証拠写真やスキャンデータは予想以上に容量を圧迫するため，余裕を持たせておくと管理が容易になります。
ディスプレイと拡張性
複数文書を並べて確認する場面が多いため，14〜16インチの高解像度ディスプレイがおすすめです。オフィスや自宅では外部モニタに接続できるとさらに効率的です。
また，USB-C/Thunderbolt ポートがあれば，充電・画面出力・データ転送を1本でまかなえます。
セキュリティ機能
弁護士業務では情報漏洩防止が必須です。TPMチップ搭載，顔認証や指紋認証など，ハードウェアレベルでのセキュリティ対策があるモデルを選びたいところです。
光学ドライブ対応
最近は内蔵ドライブ搭載モデルがほとんどなくなりました。必要な場合は外付けDVDドライブを別途用意するのが現実的です。
モバイル性能
出張や裁判所への持ち込みが多い場合，目安として重量1.2kg以下で，長時間バッテリーが持つモデルが便利です。USB-C対応であれば，モバイルバッテリーから充電できる点にも注目してください。
用途別の推奨モデル案
弁護士が扱う業務は，企業法務から訴訟対応，さらには出張を伴うクライアント対応まで，実に多様です。
業務内容に応じてPCに求められる性能や特性は大きく異なるため，「汎用的に何でもできる1台」よりも，「自分の業務スタイルに最適化された1台」を選ぶことが，長期的な生産性向上に繋がります。
以下では，代表的な3つの用途別に，重視すべきポイントと推奨モデルを紹介します。
※ なお，価格情報は執筆時点の参考値です。
企業法務向け（契約レビュー・相談対応）
企業法務では，長時間にわたる契約書レビューやリサーチ，依頼者とのオンライン会議などが日常的に行われます。これらの作業では，高い処理性能と快適な作業環境が重要です。
特に，同時に複数のWordファイル・PDF・ブラウザタブを開きながら作業することが多いため，16GB以上のメモリと高性能CPU（Core Ultra 7クラス以上）を備えたモデルが理想的です。また，モニタ拡張による作業効率化を考慮し，外部ディスプレイ出力ポートを複数備えた機種がおすすめです。
重視するポイント
- 高性能CPU（Core Ultraシリーズ，Ryzen 7 など）
- 16GB以上のメモリ
- 複数モニタ対応（HDMI・USB-C両対応）
- バッテリー持続時間8時間以上
推奨モデル例
Microsoft Surface Laptop Studio 2
（14.4インチ／16GB以上／約40〜46万円）
└ パワーとデザインを両立した上位機です。高精細タッチディスプレイは契約書への注釈や図表作成にも最適です。
訴訟実務向け（証拠資料・法廷持ち込み）
訴訟業務では，膨大な証拠データや裁判資料を扱うため，ストレージ容量とデータ保護性が特に重要です。加えて，裁判所や出張先での利用を考えると，堅牢で持ち運びにも耐える設計が求められます。
また，個人情報や機密資料を扱うため，TPMチップ・指紋認証・顔認証といったセキュリティ機能を標準搭載しているモデルが望ましいでしょう。
重視するポイント
- 大容量SSD（1TB以上推奨）
- 高解像度・広視野角ディスプレイ（資料閲覧の快適性）
- セキュリティ機能（TPM・生体認証）
- 堅牢性・耐衝撃設計
推奨モデル例
HP EliteBook 860 G11
（16インチ／16〜32GB／1TB／約25〜30万円）
└ 企業向けセキュリティを完備し，証拠管理やオンライン会議など複数タスクも快適にこなせます。
モバイル重視（出張・裁判所・顧客訪問）
外出先での作業が多い弁護士には，軽量かつバッテリー持続時間に優れたモバイルPCが最適です。
リモート接続やクラウド文書へのアクセスを円滑に行うため，Wi-Fi 6E対応やUSB-C給電対応といった最新の通信・充電規格も選定のポイントになります。
特に，飛行機・新幹線・カフェなど電源確保が難しい環境でも安心して使えるよう，10時間以上のバッテリー駆動を目安に選ぶと良いでしょう。
重視するポイント
- 軽量（1kg前後）で持ち運びやすい
- 長時間バッテリー（10〜15時間）
- USB-C給電対応（モバイルバッテリー充電可）
- Wi-Fi 6E・5G通信対応（モデルによる）
推奨モデル例
NEC LAVIE Pro Mobile
（13.3インチ／16GB／512GB／約18〜22万円）
└ 質感が高く，出張先や会議室でもスマートに使える，国産の軽量モバイルPCです。
ASUS ExpertBook B9
（14インチ／16GB／512GB〜1TB／約20〜25万円）
└ 世界最軽量クラスながら高い剛性を持ちます。USB-C給電・耐久設計で出張業務に最適です。
まとめ
弁護士業務に最適なPCを選ぶには，処理性能・セキュリティ・携帯性のバランスを意識することが重要です。本記事で示した技術用件と用途別モデル案を参考に，今後3〜5年の業務を見据えた投資を行ってみてはいかがでしょうか？
